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僕に天使が舞い降りた日 PAGE4

last update Dernière mise à jour: 2025-08-23 15:21:45

 僕はこの瞬間、絢乃さんに一目ぼれしたのだ。まだどこの誰なのかも分からずに――。

 たったの数ヶ月前、あんなひどい仕打ちにったのに。「もう恋なんてしない」と心に誓ったことさえなかったことになるくらい、ごく自然に彼女に惹かれた。

「――ねぇ、そこのあなた。さっきウチの絢乃と見つめ合っていなかった?」

「…………ぅおっ!? は、はいぃぃっ!?」

 後ろから落ち着いた女性の声がして、僕は思わず飛びずさった。……ん? 待てよ。今、「ウチの絢乃」って言わなかったか、この人?

「あ……、奥さまでしたか。取り乱してしまって申し訳ありません。僕は篠沢商事総務課の、桐島貢と申します」

 僕に声をかけてきたのは篠沢会長の奥さま、加奈子かなこさんだった。「奥さま」とはいっても彼女が実質篠沢財閥のドンで、会長が婿養子だったというのは社内でも有名な話だったのだが。

「あら、あなた社員だったの。桐島くんね。――上司の島谷さんは? 姿が見えないようだけど」

「ああ、実は僕、課長の代理なんです。島谷は今日、急に都合が悪くなったとかで……」

 あんな人でも上司だったので、僕は彼の顔を潰さないよう上手く言いつくろった。

「あらそう。宮仕えも大変ねぇ。まぁ、ウチの夫も結婚前はそうだったから、私も気持ちはよぉーーく分かるわ。サラリーマンって大変よねー」

「…………はぁ。――ところで、先ほど『ウチの絢乃』とおっしゃっていませんでした?」

「ええ。さっきの子、私とあの人の娘なの。名前は絢乃。今十七歳。私立茗桜めいおう女子の二年生よ」

「へぇ……、高校生なんですか。大人っぽいですね」

 絢乃さんがまだ高校生だったと聞いて、僕は驚きを隠せなかった。服装や髪型、メイクのせいだろうか。それとも彼女の持つ雰囲気のせいだろうか。実年齢よりずっと大人に見えていたのだ。

「そうよー、まだ未成年。だからたぶらかしちゃダメよ」

「しませんよ、そんなこと!」

 僕は相手が会長夫人だということも忘れて吠えた。恋愛にトラウマを持つ人間がそんなことをするわけがないじゃないか!

「でも、あの子に一目ぼれしたでしょう? あなた」

「……………………」

 それは思いっきり図星だった。そんな僕の反応をご覧になって、加奈子夫人は楽しそうにニヤニヤ笑った。

「ところで、あなたお酒は飲まないの?」

 彼女は僕が手にして
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  • トップシークレット☆桐島編 ~お嬢さま会長に恋した新米秘書~   彼女に出会えたことの意味 PAGE15

     小さなダイヤがあしらわれたプラチナリングを左薬指にはめて差し上げると、絢乃さんはものすごく喜んで下さった。「……絢乃さん、実は……。僕、お父さまから一年前のクリスマスイブに頼まれていたんです。『絢乃さんのことを頼む』って。それには、生涯のパートナーとしてという意味も含まれていたんです。僕はやっとお父さまとの約束を果たすことができそうです。……こういうと、お父さまの言いなりでプロポーズをしたように思われそうですが」「でも、貴方は貴方自身の意思でわたしとの結婚を決めたんでしょ? ホントにありがとう」「はい。それはもちろんです」「だったらいいの。パパのことは持ち出さないで」 結婚を決めたのはあくまでも僕たち自身だった。お父さまがお決めになったわけではなく。   * * * * その夜、絢乃さんは僕の部屋に泊まって行かれることになった。それは僕たちにとってずっと待ち焦がれていた瞬間だった。――僕と彼女が初めて体の関係を持つという。 着替えがないというので急きょ購入したモコモコのルームウェアと真新しい下着を脱がせた時は緊張した。僕自身、女性を抱くのは美咲以来のことだったから。 丁寧に秘部を指や舌でほぐし、避妊具を着けて挿入する時、彼女は一瞬痛そうに顔をしかめておられたが、「大丈夫、続けて」と躊躇する僕を促して下さったので、僕はそのまま行為を続けた。「……絢乃、気持ちいい?」 行為の間は名前を呼び捨てにしてタメ語で、という彼女のお願いを聞き入れた僕が耳元でそう訊ねると、彼女は喘ぎながら「うん」と頷いた。 彼女の声はやっぱり艶っぽくて、僕の脳までとろかしていった。僕に抱かれるまで、ずっと一人でこんな声を漏らされていたのだ。でも、他の男に聞かれていなくてよかった。この声はこれからも一生涯ずっと僕だけのものだ。「絢乃さん……、僕はもう……っ」「あぁ……っ、わたしも……っ」 大事な部分を繋げ合ったまま、僕たちは幸せな気持ちで二人同時に絶頂を迎えたのだった。

  • トップシークレット☆桐島編 ~お嬢さま会長に恋した新米秘書~   彼女に出会えたことの意味 PAGE14

     そして、絢乃さんはどうして僕があの場にいたのか分からずにワケが分からない、という様子だった。 僕は彼女が無事でホッとした気持ちが膨らみすぎて、公衆の面前であるにも関わらず、彼女をギュッと抱きしめていた。 その時の僕は震えていた。彼女を失うかもしれないという恐怖心が大きすぎて、その反動だったのかもしれない。 もう、この人のことは絶対に離さない。僕が守るんだ――。そう心に固く誓った。 とりあえず、彼女には僕のクルマの後部座席に乗って頂き、僕も同じく後部座席へ移動した。  僕へ謝罪する彼女も、やっぱり何かあった時にはあのお二人に守ってもらうつもりでおられたらしい。僕はそれが面白くなく、「あなたが他の人に守られるなんて、僕はイヤなんです。あなたを守るのは僕じゃないとダメなんです」とダダっ子みたいなことを言ってしまった。 僕を守るためというなら、あえて僕と距離を置いて中傷の目を遠ざけるという方法もあったはずだが。彼女はそれがイヤだったとおっしゃった。多少危険があったとしても、お金がかかっても僕の側にいて守る方がいいと思ったと。それだけ、彼女の僕への愛は深かったということだ。「…………まぁ、絢乃さんに何もなかったからもういいです。その代わり、僕に心配をかけるのはこれで最後にして下さいね? 約束ですよ?」「うん、分かった。もう二度と、こんなことはしないって約束するから」 僕たちは指切りをして微笑み合った。彼女はウソをつけない人なので、信じて大丈夫だ。こう思えるようになったのも、もちろん彼女のおかげだった。僕もずいぶん変わったなと思う。 そして、僕はちゃんと言葉にして彼女からのプロポーズの返事を――プロポーズ返しをした。「――絢乃さん、僕、覚悟を決めました。あなたのお婿さんになりたいです。僕と結婚して下さい。お父さまの一周忌が済んで、絢乃さんが無事に高校を卒業して、そうしたら。……で、どうでしょうか」「はい。喜んでお受けします!」 彼女は万感の思いで頷いて下さり、僕たちは晴れて婚約関係となった。指輪はクリスマスイブに改めて贈ることになった。   * * * * ――そして迎えた、絢乃さんと二人きりで過ごす初めてのクリスマスイブ。 僕たちは会社帰りにお台場のツリーを見に行き、オシャレなレストランで夕食を摂った。ちなみに絢乃さんはすでに学校が冬休みに

  • トップシークレット☆桐島編 ~お嬢さま会長に恋した新米秘書~   彼女に出会えたことの意味 PAGE13

     ――絢乃さんと〈U&Hリサーチ〉のお二人とで立てられた作戦決行の日は土曜日だった。 土曜日はキックボクシングの練習がある日なのだが、僕も作戦の行方が気になっていたのでその日は練習を休んで決行場所に行くことにした。絢乃さんにはお知らせせずに。『――桐島さん。あんたも作戦のこと気になるだろ? だったら、篠沢会長には内緒で見届けに来ればいい。今度の土曜日、新宿の駅前で決行することになってるから』 事務所を訪ねた日の帰り、内田さんがそう声をかけて下さったのだ。作戦の内容についても、その時に説明されたのだが……。 別れた女性には必ずリベンジポルノを仕掛けていたという小坂リョウジを絢乃さんがわざとデートに誘い、そこで彼の本性を暴いてその様子を真弥さんが乗っ取った彼の裏アカウントからライブ配信するという作戦に、僕は卒倒しそうになった。大丈夫なのか、この作戦!? 絢乃さん、まだバージンのはずだろ!?  彼女に何かあった時のために、武闘派刑事だった内田さんと空手の有段者だという真弥さんがボディガードも兼ねるというが、その役目は僕じゃダメだったのだろうか……。 その日、絢乃さんは背中のパックリ開いたシースルーのミニワンピースをお召しになり、その上からレザージャケットを羽織っていた。そういえば、夏に胸元と袖の部分だけがシースルーになっているワンピースをデートに着て来られたことがあったが、もしかしたらその服と一緒に購入されたのかもしれない。どうでもいいが、遠目から見ても目のやり場に困る。 やがて、何も知らないであろう小坂さんがのほほんとした様子で現れ、普段より大胆な格好をした絢乃さんをナンパし始めたが、絢乃さんは堂々と彼に啖呵を切った。「わたしが貴方を誘惑するわけないじゃないですか! 彼を傷つけた相手を好きになるわけないでしょ? 貴方の頭の中、お花畑ですか? ……わたし、貴方なんか大っっっキライです!」 彼女のおっしゃった「彼」というのは僕のことだとすぐに分かった。僕を守るためにここまでして下さっているんだと、僕の胸が熱くなった。 やがて内田さんと真弥さんも姿を現し――二人とも、どこに隠れていたんだろうか――、この状況がSNSでライブ配信されていることを暴露したことで、作戦は無事成功したようだった。 ……が次の瞬間、怒り狂った小坂さんが絢乃さんに襲い掛かろうとした

  • トップシークレット☆桐島編 ~お嬢さま会長に恋した新米秘書~   彼女に出会えたことの意味 PAGE12

     それだけあんたのことを愛してるからだろ、と内田さんは続けた。 確かに、彼女が篠沢グループのトップに立ってからずっと、僕は彼女に守られてばかりだった。最初は社員の一人として守られているだけだと思っていたが、それは違った。彼女は最初から、僕のことを愛しているから守って下さっていたのだ。「もうちょっと自分の彼女のこと信用してあげなよ、桐島さん」「信用はしてますよ、ずっと」「まぁオレも、偉そうなことは言えねぇんだけどな。――オレは、ここにいる真弥に救われたんだ」  内田さんが思わぬカミングアウトをしたので、僕は彼の過去――この事務所を開く前のことが気になった。「あの……、ホームページで拝見したんですけど。内田さんって前は警視庁の刑事さんだったんですよね? どうして退職されたんですか?」「警察組織に嫌気がさしたから、だよね」 まず最初に口を開いたのは真弥さんで、内田さんも「ああ」と頷いた。彼女も事情をよく知っているらしい。「真弥とはある事件をとおして知り合ったんだけどさ。彼女、実はスゴ腕のハッカーで、捜査に協力してもらってたんだ。それで犯人は逮捕できただけど、彼女に協力してもらったことで監察官に目をつけられてさ。真弥は警察組織のお偉いさんがある事件を揉み消してたことを突き止めてた。そのことをうやむやにしたかったらしい上にクビにされかけて、逆にオレの方から辞表を叩きつけてやったんだ。こんな腐った組織なんかクソだ、ってな」「んで、警察を辞めたこの人にあたしから言ったの。『二人で調査事務所やろうよ』って」「そうだったんですか……」「だからオレは、そこに彼女――真弥と出会えた意味があるんじゃないかと思ってる。桐島さん、あんただってそうじゃないのか?」「僕が、彼女に出会えたことの意味……か」 絢乃さんに出会えたことで、僕は会社を辞めなくて済んだ。彼女の秘書になったことで、自分の仕事を好きになれたし誇りも持てるようになった。バリスタになるという夢にも一歩近づけた。 そして、彼女を好きになったことで女性不信も克服できた。あんなに消極的だった結婚も前向きに考えられるようになった。 それはすべて、絢乃さんに出会えたからだ。これこそ、僕が彼女に出会えたことの意味に他ならなかった。

  • トップシークレット☆桐島編 ~お嬢さま会長に恋した新米秘書~   彼女に出会えたことの意味 PAGE11

    「すみません、突然押しかけてしまって。もう事務所を閉められる頃だったんじゃないですか?」「いや、別に構わねえよ。個人でやってる事務所だから時間の融通はきくし」 内田さんはそう答えて下さった。一般企業ではないから、特に閉所時間なんていうのは決めていないのかもしれない。「――誹謗中傷の投稿をしたのは、俳優の小坂リョウジさんだったそうですね。動機は僕への逆恨みだったとか」「ええ。あの男、調べた限りじゃ所属事務所もクビになってて相当焦ってるみたいですよ。絢乃さんには会長就任の記者会見を見てからずっと目をつけてたみたいですね。彼女に取り入れば大きな仕事が転がり込んでくるって」 答えて下さったのは真弥さんの方だった。「ふてぇ野郎だよな」と内田さんも同調して、彼女と視線を交わしていた。どうでもいいが、来客の目の前で恋人同士の空気を出すのはやめてほしい。「……あの、今日、こちらへ訪ねてきたのはですね。調査が終わった後なのに、絢乃さ……会長が僕に内緒であなたと頻繁に連絡を取り合っているようなので、ちょっと気になって」「……………………」 本題を切り出すと、内田さんは何か後ろめたいことがあるように僕から目を逸らした。「もしかしてあなた、彼女と浮気してるんじゃないですか?」「「…………~~~~っ、アハハハっ!」」 僕が指摘すると、彼も真弥さんもなぜか大爆笑した。どうして僕はこの二人からこんなに笑われているんだろうか。「あー、ごめんごめん! なんかあんたに誤解させちまったみたいで申し訳ない! でも、それは絶対にねえから。依頼人には手を出さない、これ探偵の鉄則な。――絢乃会長と連絡を取り合ってるのは、三人でちょっとした作戦を立ててるからで……、あんたには内緒にしてほしいって言われてんだけどな」「作戦?」「ああ。あんたに話したら絶対に反対されるから、って。そんだけヤベえ作戦ってことなんだけどな、それでも彼女はやりたい、だからオレたちにも協力してほしいって」 つまり、それだけ危険を伴う作戦ということだろうか。ケガをさせられる、もしくは彼女の貞操にも影響が……? だから彼氏の僕にも言えなかったのか?「そんなに危険な作戦なら、あなた方も止めて下さいよ。分かっていて協力するなんて、そんな……恋人である僕を差し置いて」「おっ、それがあん

  • トップシークレット☆桐島編 ~お嬢さま会長に恋した新米秘書~   彼女に出会えたことの意味 PAGE10

     絢乃さんはその調査をお願いした時に、五十万円もの大金を料金として支払ったという。 僕は「絢乃さん、金銭感覚バグってるでしょう絶対!」と呆れたが、「あなたを守るためなら、百万円だって一億円だって安いものだよ」と言い切られた。要は金額の問題ではないのだと。僕を守りたいというその気持ちだけは、ものすごく嬉しかったのだが。何だか自分が弱い人間のように思われていたのがショックだった。 この誹謗中傷には加奈子女史もかなりお怒りだったので、調査を依頼したこと自体は妥当な方法だったと僕も思う。が、その後から絢乃さんが僕の知らないところでコソコソとその探偵と連絡を取り合っていたのが気に入らなかった。絢乃さん、まさかその探偵と浮気してるんじゃないだろうな……!?  ともかく、僕はその探偵……というか調査事務所が本当に信頼できるのか確かめるべく、一度訪ねて行った。ちなみにこのことを絢乃さんはご存じない。 ネットでホームページを検索して住所を調べ上げ、新宿にある一階にコンビニの入った三階建てビルに辿り着いた僕は、二階にある事務所のドアチャイムを押した。「…………はい? どちらさん?」 ガチャリとドアが開き、顔を出したのは野太い声をした、僕より背の高い男性だった。年齢は兄と同じくらい。髪は短くてガタイがよく、ちょっと強面だった。「あ……、あの。こちらが〈U&Hリサーチ〉で間違いないでしょうか?」「そうだけど。――あ、アンタ、もしかして桐島さん? 篠沢絢乃会長の彼氏の」「はい、そうですけど……。僕のことご存じなんですか?」「そりゃあな、調査の当事者だからさ。――立ち話もなんだし、中へどうぞ」 おジャマします、と事務所の中へ通された僕が茶色いソファーに腰を下ろすと、男性――この人が所長の内田さんだという――がグラスに入った冷たい緑茶を出して下さった。奥では絢乃さんと年齢が同じくらいの女性がデスクトップPCに向かった何かされていた。彼女もここのスタッフだろうか。「……ありがとうございます。いただきます」「すいませんねぇ、こんなもんしか出せなくて。オレ、元刑事だからさ、お茶くみとか苦手なんだよ」「はぁ」「ウッチーが苦手なのはそれだけじゃないじゃん。デジタルオンチのくせに。だから調査は専らあたしの仕事なんですよー」「…………っ、にゃろ

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